ケーキ屋の彼
「家に帰ったら、紅茶を淹れて食べたいわ」
高校生のような若々しさはないが、その代わり落ち着いた雰囲気を漂わせる2人。
その2人に、紅茶やケーキという言葉はぴったりであった。
「私も、弟にコーヒーセットで出そうかな」
「きっと喜ぶはずよ」
2人はお菓子の話で盛り上がる。
甘いお菓子は、人をなぜこんなにも幸せにするのだろう。
「そういえば柑菜ちゃん、あの方に惚れてるの?」
櫻子は、柑菜の目を見てそう言った。
確信はないけれど、半分くらいは自信を持っている櫻子の目。
「え?!」
思いも寄らぬ櫻子の言葉に、柑菜はまるで幽霊でも見たかのような声をあげる。
それは、柑菜にとって、全く予期せぬことだったから。
目をまん丸くして、口を半開きにした柑菜の顔は、櫻子に笑いを誘う。