ケーキ屋の彼
「わー、すごいっ!」
チョコレート展にきた4人は、その甘い香りの包まれる空間に早くも興奮している。
柑菜も2度目だと言うのに、まるで初めてきたかのようにその2つの目を輝かせている。
ふと横を見たとき、真莉の姿を柑菜は捉えた。
「あら、また来たのね」
「はい、……チョコレート好きなので……。」
「そう……それならうちのも食べなさい」
真莉は、一口サイズのチョコレートを柑菜や櫻子に渡した。
それは、可愛らしい桜の形をしていて、味覚だけではなくて視覚も楽しめる。
柑菜はそれを、口の中に入れた。
「お、美味しい……」
苺だとばかり思っていたそのピンクのチョコレートは、日本の春に香る桜の風味がして、まるで日本の風情をその一粒に込めているようだった。
舌の上で溶けていくそのチョコレートは、ざらつきが一切なく、生クリームのように滑らかだ。