ケーキ屋の彼
柑菜たちは、いったんそのカフェで休むことにした。
チョコレートの甘さに合いそうな、ブラックコーヒーの香りを感じる。
柑菜は、先ほど買った真莉のチョコレートを見ながら『コーヒーと一緒に食べたらきっと合うんだろうな』と思う。
カフェでコーヒーを楽しんでいる人たちは、テーブルの上に買ったばかりのチョコレートを広げ、優雅な時を過ごしていた。
「俺、みんなの分買ってくるよ」
涼は、3人からそれぞれ飲みたいものを聞き、それを買うために行列に並んだ。
柑菜は、その場を見渡す。
多くの人がいる中、休憩を取っているのか、どこかへ向かう真莉を見つけた。
「ねえ、ちょっと私席外すね、でもすぐ戻るから」
「うん、分かった」
亜紀からの返事を聞き、すぐに柑菜はそのあとを追う。
「真莉さん!」
多くの人の中で、真莉の歩みを止めるために、柑菜はその名前を叫んだ。
「あら……あなた……」