ケーキ屋の彼

腕時計を見た柑菜は、急いで3人の元へ戻る。


3人は、とくに気にしている様子はなく、話に花を咲かせていた。


「柑菜ちゃん、これすごく美味しいわよ」


それぞれ買ってきたチョコレートを、みんなで食べているようだ。


柑菜も、先ほど買った桜のチョコレートをそこに並べる。


4種類のチョコレートの味はどれもそれぞれに特徴を持っていて、それは飽きを感じさせない。


だけどやはり、柑菜には真莉のチョコレートが一番印象深く感じている。


「なんか、すっきりした感じだね」


柑菜を見た亜紀は、柑菜にそう言う。


「そう、かな?」


3人は詳しくは聞かないものの、柑菜の表情を見て何かあったんだろうなと感じ取っていた。


「私も、前に進まないと」


桜のチョコレートを1つ食べた柑菜は、みんなには聞こえない声でそう呟く。


みんなのひとつのものに対する真剣な眼差しを見て、柑菜はそう思う。


自分も、そろそろ本気で向き合わないとーー。
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