ケーキ屋の彼
ある日の金曜日、柑菜は大学を出てケーキ屋に向かっていた。
道路に植えられている木の葉っぱは、赤や黄色に色づいていてくれ、それは秋という季節を感じさせる。
途中、遊歩道を歩くと、両側にある金木犀が秋の香りを漂わせていた。
柿の木にはその実がなっていて、食欲の秋を感じさせる。
どこからともなく匂ってきたサツマイモの香りが、柑菜のお腹を空かせる。
柑菜はそれを買おうか迷った末に、今日はやめておくことにした。
今日は、秋斗のケーキを買う日だからだ。
坂を登りいつもの曲がり角を曲がると見えてくるケーキ屋は、何度来ても胸を踊らせる。
そのケーキ屋の隣には『秋のお菓子フェア』という張り紙が貼ってあった。
柑菜がそれを見るのは、初めてではなく何度かだったが、実はそのお菓子をまだ食べたことがなかった。
サツマイモやカボチャのお菓子を想像すると、よだれが垂れてきそうになる。