ケーキ屋の彼
「いっらしゃいませ」
柑菜だと気づいた秋斗は、微笑みながら会釈をした。
ケーキ屋には、柑菜以外にも数人のお客様がいて、ショーケースに入ったケーキやテーブルに並べられてある焼き菓子を見ている。
「あの人かっこよくない?」
「うん、イケメンだよね」
柑菜の耳に、若い女の人2人がその話をするのが聞こえてきた。
2人は、お菓子を選びながら秋斗のこともちらちらと見ている。
「話しかけなよ」
「ええ、いいよ」
その女の人たちは、選んだお菓子を秋斗のところに持って行った。
2人でちらちらと目配せしている姿を、柑菜は無視せずにはいられない。
ケーキを選ぶ余裕すらない。
「ちょっと、ケーキを見たいんですけどいいですか」
悶々としている柑菜に、ある人が話しかけた。
柑菜は、その声を聞き「すみません」と相手の顔を見る。