ケーキ屋の彼
「そろそろ戻るね」
空は、櫻子と完全に鉢会う前にその場を後にする。
「え、待っ」
最後まで聞かずに、空は走って音楽棟のある方まで走っていく。
櫻子が柑菜の元に来ると「変な人ね」と空の背中を見ながらそう言った。
「うん、たしかに……」
同じように、空の背中を見ながらそう頷く柑菜は、本当に自分を好きなんだろうかと思う。
そう思う反面、柑菜は自分が秋斗に一目惚れをした時のことを思い出していた。