ケーキ屋の彼

「貴方っていつもそう、好きだと言って告白して、それの繰り返し。そんな貴方のこと、幼馴染だからって信用できると思うかしら?」


「でも、今回は本気なんだ」


急に真顔になる空の顔は、櫻子が今までにみたことのない真剣な顔だった。


そのせいで、出かかった言葉は消えてしまう。


「僕は好きな人と結婚したい。決められたものではなく」


櫻子と同じように、親に決められたレールを歩かなければならない空は、せめて一生を共にする人くらい、自分で見つけたいとこの数年間ずっと思っていた。


「そんなの……私だって一緒よ……」


空と同じことを思っていても、それを口にすることすらできない臆病な櫻子。


だから、素直に自分の思いを言葉にする空に嫉妬してしまう。


だからと言って、柑菜の邪魔をすることは別の話だ。


「だからって、柑菜ちゃんじゃなくてもいいじゃない」
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