ケーキ屋の彼

「僕、ちゃんとした告白するよ」


「それはダメよ!」


好きでいても構わない、だけどそれだけにしてほしい、櫻子は心からそう願う。


「櫻子こそ、好きな人に告白したらいいじゃないか」


「そんな人……いないわ」


そう言う櫻子を見る空の顔は、今この時間の中で1番哀しそうな顔をしていた。


窓から見える、葉の枯れていく木々。


地面に落ちていく葉は、静かにそっと誰にも気付かれない。


「君はいつまで経っても頑固なんだね。だから僕は……」


そう言われた櫻子は、無言で空の顔を見る。


ーーなんで、そんな表情しているの……?


思わずその空の顔に手を伸ばし、そっと包みたくなる思いが浮かんだが、櫻子はすぐに我に返った。
< 174 / 223 >

この作品をシェア

pagetop