ケーキ屋の彼
「僕、ちゃんとした告白するよ」
「それはダメよ!」
好きでいても構わない、だけどそれだけにしてほしい、櫻子は心からそう願う。
「櫻子こそ、好きな人に告白したらいいじゃないか」
「そんな人……いないわ」
そう言う櫻子を見る空の顔は、今この時間の中で1番哀しそうな顔をしていた。
窓から見える、葉の枯れていく木々。
地面に落ちていく葉は、静かにそっと誰にも気付かれない。
「君はいつまで経っても頑固なんだね。だから僕は……」
そう言われた櫻子は、無言で空の顔を見る。
ーーなんで、そんな表情しているの……?
思わずその空の顔に手を伸ばし、そっと包みたくなる思いが浮かんだが、櫻子はすぐに我に返った。