ケーキ屋の彼
「そういえば、渡辺くんもあそこのケーキ好きなの?」
「風の噂で美味しいって聞いたんだ」
「そう、なんだね」
柑菜は、秋斗と空はどこか浮世離れしている雰囲気が似ていると感じていた。
2人とも、ガツガツしたものを見せなくて、流れに身を任せているような感じ。
けれど、秋斗はその中に強くしっかりとした芯を持っていて、一見はただの石に見えるけれどそれはもし触ってしまうととても熱い。
空を見た柑菜は、空もまた同じようなものを持っているのかと彼の顔を見た。
「モンブラン、すごく美味しかったよ」
「秋斗さんのおすすめだから、間違いなしですね!」
柑菜は満面の笑みを浮かべてそう話す。
「秋斗さん…………か。櫻子も行ったことがあるんだろう?」
少し暗い表情を浮かべた空だったが、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「ええ、本当に美味しいわよね。柑菜ちゃんに教えてもらえてよかったわ、それに秋斗さんも良い人だし」