ケーキ屋の彼
「柑菜ちゃんがどういう選択をしても、私は応援するわ」
「……うん、ありがとう」
自分の考えていることが分かってしまったのだろうか、柑菜は櫻子の顔を見てそう思う。
「……空も結婚は自由にできないはずなの、それでもあの人は自分の心に素直でいる。」
「そう、なんだ」
空もまた櫻子と同様、自由を奪われ籠の中に入れられた王子様。
なのに、自分を好きだという空のことを考えると、柑菜は胸が締め付けられる。
ーーどんな思いで私に告白してきたのか。
柑菜は少しもその心を読み取ることなんでできなかった。
秋斗が好きなのに、揺れてしまいそうな心に柑菜は自己嫌悪に陥る。
でも、心は簡単にコントロールできるものではないことを、柑菜は知っていた。