ケーキ屋の彼
「これって、渡辺くんのもあるのかな」
掲示板の前で立ち止まって、授業の変更などがないか確認しながら話す2人。
今はちょうど授業の時間で、人は少なく掲示板のところにも櫻子と柑菜しかいなかった。
「どうかしら」
「そういえば最近忙しくて、ケーキ屋にも行ってないし渡辺くんにも会ってない」
メールのやり取りはしているものの、2人とは顔を合わせることがなかった。
そろそろ試験のこの頃は、制作課題も多く、なかなか制作室から出られない。
とはいうものの、美術が好きな2人にとってそれは苦でもないのだが。
「久しぶりに秋斗さんに会いたいな……」
「今日行けばいいんじゃないかしら? 少しなら大丈夫よ」
「そうだねっ、じゃあ夕方の授業終わったら行ってみる!」
柑菜は、急に声が明るくなり表情が生き生きとしてきた。
そして、その時間が早く来ないかと待ちきれない様子だ。