ケーキ屋の彼

「こんにちは……」


早速、日の暮れかけている時、柑菜はケーキ屋に来た。


「こんにちは」


柑菜が小さな声で挨拶をすると、それに返す秋斗。


柑菜は、嬉しさとドキドキがおさまらずに顔がにやけてしまう。


久しぶりの秋斗は、前に会った時よりも髪が少し伸びているようだった。


それがまた大人びて見えて、柑菜は顔を赤らめる。


「お久しぶりですね」


2人しかいない店内は、とても静かで穏やかな雰囲気である。


秋斗の声もまた、そのケーキ屋の雰囲気と同じように穏やかだった。


「はいっ」


「今日は何がいいですか?」


秋斗は店のものとしての姿勢を崩さずに敬語で話している。


柑菜は少し、その業務的な会話に心を寂しくするも、すぐにその気持ちを消した。


「その……今日は……」


ーー秋斗さんに会いに来ました。


柑菜は必死に頭の中で、この言葉を言ってしまうか否かを考えていた。


なぜならそれはまるで、告白のような言葉だから。
< 184 / 223 >

この作品をシェア

pagetop