ケーキ屋の彼
「こんにちは……」
早速、日の暮れかけている時、柑菜はケーキ屋に来た。
「こんにちは」
柑菜が小さな声で挨拶をすると、それに返す秋斗。
柑菜は、嬉しさとドキドキがおさまらずに顔がにやけてしまう。
久しぶりの秋斗は、前に会った時よりも髪が少し伸びているようだった。
それがまた大人びて見えて、柑菜は顔を赤らめる。
「お久しぶりですね」
2人しかいない店内は、とても静かで穏やかな雰囲気である。
秋斗の声もまた、そのケーキ屋の雰囲気と同じように穏やかだった。
「はいっ」
「今日は何がいいですか?」
秋斗は店のものとしての姿勢を崩さずに敬語で話している。
柑菜は少し、その業務的な会話に心を寂しくするも、すぐにその気持ちを消した。
「その……今日は……」
ーー秋斗さんに会いに来ました。
柑菜は必死に頭の中で、この言葉を言ってしまうか否かを考えていた。
なぜならそれはまるで、告白のような言葉だから。