ケーキ屋の彼
秋斗は、その言葉を聞くと手を止め柑菜の方を向いた。
「その……僕からもう一度聞いていいですか?」
「え?」
秋斗は頰を染めて柑菜を見ている。
「クリスマスの夜、僕と過ごしてくれませんか?」
それは、柑菜が誰でもなく秋斗から聞きたかった言葉。
だから、それを言われた瞬間に口元が緩んでしまう。
「はいっ、もちろん」
柑菜は、今にも泣き出しそうな潤んだ目をして秋斗を見ている。
もちろんそれは、心の底から湧き出してくる嬉しいと言う涙。
そして、同時に空への罪悪感も生まれてきた。
一度、きちんと言わないといけないと心の中で思う。
やっぱり自分は秋斗が好きだと。
「じゃあ、あとでまたメールします」
「はいっ」
そう約束をすると、秋斗は再び包装をし始めた。
その秋斗の顔には、笑みがこぼれていた。