ケーキ屋の彼
2人が話していると、暖かいコーヒーが運ばれてくる。
コーヒーのいい香りが2人を包む。
カップはアンティーク調のもので、ヨーロッパの雰囲気を醸し出していた。
柑菜と空は、ゆっくりと一口それを飲む。
「あったまるね」
「うん、そういえば、櫻子は元気?」
「うん、いつも通りだよ…………渡辺くんと櫻子って本当に仲が良いんだね」
櫻子はいつも空に対して憎まれ口を叩いているけれど、それは本当に仲が良くないとできないと柑菜は感じている。
「幼い頃からの知り合いだしね…………それに、実は…………僕の初恋は櫻子なんだ。まあ、僕に見向きもしないから諦めたけど」
そう苦笑いをしながらいう空の顔は、まるで今でも櫻子を思っているように柑菜には見えた。
だからつい、それを言葉にしてしまう。
「……今は、好きじゃないの?」
「まさか…………もしそうだとしたら柑菜さんに失礼だろ?」
「あは、そうだね」
たしかに、空は柑菜に好きだと言った。
だけど、柑菜はどうしても空が今でも櫻子を好きだとそう感じてしまうのだ。
ーー本当の渡辺くんの気持ちって……。