ケーキ屋の彼
10
「お邪魔します」
大きな箱を手に持った櫻子と亜紀が、柑菜の家を訪ねてくる。
その後ろには、空も立っていた。
美鈴はパーティの始まる少し前の時間に、秋斗と来ることになっている。
クリスマスで、ケーキ屋は忙しく美鈴は今日はお店を手伝っているのだ。
「みんな、手伝ってくれるなんてありがとう」
「当たり前だよ、友達なんだから!」
「そうよ、柑菜ちゃん」
亜紀と櫻子は、顔を見合わせて「ね?」と相槌を打っている。
その後ろで、いつものように笑顔を絶やさずにしている空。
空は涼の顔を見ると、思いついたように話し始めた。
「あ、初めましてのみなさんもいるので自己紹介します。音楽学部で櫻子の幼馴染の渡辺空です。よろしく」
涼は、櫻子の幼馴染というワードに反応するも、自分からも自己紹介をする。
「土橋涼です。柑菜の双子の弟です。よろしく」
「涼くんか、今度男同士で話でも」
「そうですね」
なにやら裏のありそうな2人を置いておき、女子チームは早速クリスマスパーティーの準備をし始めた。