ケーキ屋の彼
柑菜は、顔を赤くしている秋斗の姿を見て、益々その気持ちが高まってくる。
だから、ついこんなことを言ってしまう。
「秋斗さん……あの……明日、話したいことがあるんです」
「うん、分かった」
秋斗は、その言葉を聞くとどうしてもやはり自惚れの気持ちが湧いてきてしまう。
でも、どうにかそれを押し込める。
「お2人さん、そろそろいいですか?」
飲み物の注がれたカップを片手に持った美鈴が、2人の世界の中に割り込んできた。
「あ、はい!」
柑菜は思わず、大きな声を出してしまう。
みんなに見られていたかと思うと、顔から火が出そうな思いの柑菜。
秋斗もまた、さきほどよりも顔を赤くさせていた。
「はい、これ持って。乾杯してパーティ始まるから、そしたらまた2人の世界へ」
「美鈴さんっ、みんなで楽しみましょう」
柑菜は、みんな、という言葉を強調させて、美鈴の背中を押してみんなの元へ向かった。
その後ろを、秋斗は柑菜の背中を見つめながら追いかけていった。