ケーキ屋の彼
こうして友達や家族と話をすることは、こんなにも簡単で気が楽なのに、それが好きな人となると、どうしてこうも困難なことになってしまうのだろう。
柑菜は、どうしようもない気持ちを抱える。
「弟を連れて行けばいいんじゃないかしら?男の人同士なら、少しくらい世間話してもきっとおかしくないわ。そこに柑菜ちゃんが加われば自然と会話ができると思うの」
櫻子は、なるべく柑菜に負担がかからないような提案をする。
それを聞いた柑菜は、先日のことを思い出した。
涼がケーキ屋に行きたいと言っていたこと。
ーーでも、今更一緒に行くと言って怪しまれないかしら。
あの時の浅はかな考えの自分を、柑菜は少しだけ恨む。
勘違いをされる、なんて考えるよりもまずはこの今の関係を壊すことがなにより大切なことなのだ。