ケーキ屋の彼
11
12月25日。
それは、ここ日本においては恋人たちが一緒に過ごすロマンチックな日。
イルミネーションで輝く街中、大きなクリスマスツリーの前でワンピースにコートを羽織って立っているの姿は、まぎれもなく柑菜だ。
片手に持つ、少し高めのお店の袋。
携帯の時計を見ながら、少し早かったかなと思う今の時刻は夜の6時18分。
「お待たせ」
柑菜が時間を確認したすぐ後に、柑菜の大好きな人の声が聞こえてきた。
「はいっ……。私も、今来たところです」
クリスマスのムードもあってか、柑菜はいつも以上に緊張していた。
「うん、……とりあえず、レストラン行こうか。実は、予約してあるんだ」
「ありがとうございますっ」
秋斗は、さりげなく柑菜をエスコートする。
柑菜は、それを感じ取ることのできる余裕もないほどに緊張していた。