ケーキ屋の彼
「ここです」
数分歩いたところにある、お洒落なフレンチレストラン。
「ここ、いいんですか?」
普段は柑菜が来ないようなところに、ついそんな言葉が出て来てしまう。
それに、こんなところで2人で食事をするなんて、緊張が今よりも何倍にもなってしまうと、柑菜は息を止めていた。
「せっかくのクリスマスだし……それに、柑菜さんの話の前に僕から伝えたいことがあるから。ここならゆっくり話せる」
「はい、そうですね」
いつもとは違う、なにかを決意したかのような秋田の眼差しに、柑菜は視線をそらすことができず、その目をじっと見つめる。
ーー吸い込まれそう……。
まるでビー玉のような目は、街の光を反射して輝いている。
「入りましょう」
そう言われるまで、柑菜はその瞳を見つめ続けてしまっていた。