ケーキ屋の彼
「こちらがスープでございます」
席に着くと数分で、料理が運ばれて来た。
「いただきましょうか」
「はい」
2人とも、どこか緊張した面持ちで向かい合って座っている。
でも、それはもちろん相手を警戒しているものではなく、極度の緊張からくるもの。
なにを話そう、と柑菜はスープを飲みながら考えている。
「柑菜さんは、クリスマス好きですか?」
すると、秋斗のほうから柑菜に質問を投げかけてきた。
「はい、イルミネーションとか綺麗だし、神聖な感じがして好きです。いつか、ヨーロッパの本場のクリスマス、味わってみたいって思ってます」
「そうなんだ、……パリとかいいよねきっと。…………柑菜さん、今ちょっといいかな?」
「……はい、いいですよ」
そう柑菜が返事をしてから、少しの間沈黙が流れる。
その間に、ウェイトレスが前菜を運んで来た。
そのウェイトレスが去り、秋斗は意を決したように話し始めた。
「僕、実は柑菜さんに一目惚れしたんです、初めて柑菜さんがケーキ屋に来た時に」