ケーキ屋の彼
柑菜は、その言葉を聞いて自分の心臓が早くなっていくのを感じていた。
「それは……その、今も好きってことですか?」
「うん、もちろん今も僕は柑菜さんが好きです。……柑菜さんに会えたから、僕は前向きになれた。フランスに行こうって思った。出会うことができて本当によかったって思ってるんだ」
柑菜は、照れくさそうに言う秋斗を今すぐ抱きしめてしまいたかった。
でも、それは自分の気持ちもしっかりと伝えてから。
秋斗と同じ気持ちだと、しっかりと目を見て……。
「私も、秋斗さんが好きです。私も同じです。秋斗さんに出会えて、秋斗さんのケーキを食べて、また大好きな絵に真剣に向き合おうと思えた。だから、私こそ秋斗さんに会えたこと、本当にうれしいって思ってます」
「本当に……? 夢みたいだ」
「私も、目が覚めたら全部夢だったってなっていそうで……」
柑菜は、試しに自分の頬をつねってみるけれども、やはりそれはすごく痛くて、現実だということを教えてくれる。
その痛みに、柑菜は笑ってしまう。
「その……来年、もし柑菜さんさえよければフランスでクリスマス過ごそう」
「はいっもちろんです!」
うれしいと思う反面、気持ちが通じ合ったのにも関わらず、秋斗がフランスに行ってしまうことはやはり柑菜にとっては非常に寂しいことであった。