ケーキ屋の彼
「彼は、美鈴先輩の思い、知ってるんですか?」
「どうかしら……知っているかもしれないし、知らないかもしれない」
はっきりとしない美鈴の答えに、涼はもやもやとした気持ちになる。
「何年間、好きなんですか?」
嫌われるかもと思いながらも、質問することをやめられない。
「そうね……10年くらいかしら」
それに、あくまでも平静で答える美鈴に、なぜだか涼の方が感情的になってしまう。
「なら……! もうそろそろ、新しい恋、してもいいんじゃないんですか?」
「誰と?」
「え?」
思いもよらぬ質問に、涼は言葉が詰まる。
なんと答えれば良いのか、考えても考えても答えは出てこない。
ーー俺と、なんて言ってもきっと今は駄目だ。