ケーキ屋の彼
家に着くと、すでに柑菜の双子の弟の涼が、大学から帰ってきていた。
ケーキ屋から10分ほどの距離にある土橋家は、白い壁が特徴の2階建てだ。
「またそこのケーキ?」
袋のロゴを見た涼が、つまらなそうに柑菜に話しかける。
「うん、だって美味しいんだもの」
「ふうん」
涼は、あまり興味がなさそうで、力の抜けた返事をし、ソファに腰を掛けた。
そして、ソファの目の前にある薄型テレビを付ける。
一方柑菜は、甘いケーキに合う紅茶を淹れるためのお湯を沸かそうと、ケトルに水を注いだ。
その柑菜の動作を見た涼は
「俺、コーヒー」
と、彼女に言うのだった。
「分かりましたー」
と、柑菜はいつものようにさらっと返事をする。