ケーキ屋の彼
「それより! 私にばかり好きな人のこと聞いてきたけど、涼くんはいるの?もしいるなら私が恋の先輩として話聞いてあげるわよ〜」
美鈴は、少し酔ってきたのか声が先ほどよりも大きくなり、なんだか陽気な雰囲気になっていた。
それとは逆に、涼はそれを聞いた瞬間、『1ミリも伝わってなかったのか』と肩を落とす。
そして、目の前にあるお酒を一気に飲み、「教えません!」と、大きな声で言う。
そして、通りかかった店員に、新しいお酒を注文した。
「なんだそれ〜〜? ずるい!」
「先輩が知らない人ですから」
涼は美鈴から視線を逸らす。
「ふうん、そうなんだ」
口を尖らせて、涼の目の前にある野菜コロッケを奪う美鈴。
「ああ! 先輩酷いですよ」
幼い頃から好きだった野菜コロッケを奪われた涼は、本気で悔しがった。
「涼くんが意地悪だからよ」
もぐもぐと、美鈴はその野菜コロッケを食べた。
涼は恨めしそうに美鈴を見る。