ケーキ屋の彼
2人のいる居酒屋は、時間がたつほどに賑わいを増してきた。
それとは逆に、2人の食事は終わりを迎えようとしている。
ここから先は、サラリーマンの世界だと言うように、スーツを着た人たちで居酒屋が埋め尽くされた。
「ラーメン食べたら、出ようか」
「そうですね」
運ばれてきたラーメンを食べると、たしかに美鈴の言う通り、海を感じることのできるスープの味で、はまってしまいそうである。
「美味しいでしょ? 海の潮風! って感じよね」
「確かにそうですね」
何故だか美鈴は、拳を握り一昔前の歌を歌う。
その歌も、半分ほどこの居酒屋の音にかき消される。
「先輩、おやじっぽい」
涼は、美鈴にわざと聞こえないようにそう独り言を呟いた。