ケーキ屋の彼
「ねえ、涼くん」
涼が美鈴と反対方向を向いた時だった。
「きっと、柑菜さんなら秋斗とうまくいく思うわ、ストレートとはいかないかもしれないけれど。幼馴染が言うなら間違いないでしょ」
「それなら先輩はどうなるんですか?!」
涼は勢いよく美鈴の方に向き直す。
自分に思いが向いてほしいと涼は思うけれど、好きな人があまりにも切ない声で相手のことを思っている声を聞くと、やりきれない気持ちになる。
そして、抱きしめたくなる。
「大丈夫」
涼は今までに、こんなに不安になるような大丈夫を聞いたことがあるだろうか。
遠くから、男子学生であろう声が聞こえて来る。
それは、だんだんと近づいてきた。
「じゃあ、私も帰るね」
美鈴はその団体が来る前に、涼を残してこの場から早足でいなくなった。