ケーキ屋の彼
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「今日、あのケーキ屋行くな」
金曜日の朝、テレビでは朝の情報番組が流れている。
美味しそうなトマトを紹介する番組で、テレビの中からはアナウンサーやゲストなどの笑い声が聞こえてきた。
しかし、それとは真逆に、涼の低い声が柑菜の動きを止める。
柑菜はその低い声に、つい後ずさりをしてしまった。
「今日は行かないけど、明日は誕生日ケーキ櫻子と取りに行くよ……」
涼の機嫌を見ながら、弱々しくか細い声でそう言う柑菜を、涼は見ようとはしない。
涼は、床の一点を見つめている。
沈黙の中、テレビから流れる明るい声が、妙に柑菜の耳に入って来る。
「明日もだめだ、それくらい1人で行かせればいいだろ」
それでもなお、涼の声は低く、柑菜を怯えさせる。
そして、理不尽な涼の言葉に柑菜は少しずつ苛立ちを覚えた。
「そんな、なんでそんなこと……」