ケーキ屋の彼
あっという間に放課後になった。
柑菜は、櫻子を連れて、あの坂を登っている。
空を見ると、今日の空は青空の中に白い雲が浮かんでいて、またそれもポップな感じがして楽しいと、柑菜は思った。
それに、雲は見るたびに形が変わっていて面白い。
その時、見たことのある女性、というより見たことのある帽子を被った女性が、今度は坂を下ってきた。
ーーやっぱり、あのケーキ屋と何か関係がある人……?
櫻子を間に挟み、すれ違う。
それと同時に、あの甘い香りが漂ってくる。
「あら、今の方、すごく甘い香りがしていたわ、もしかして、柑菜ちゃんが今から行こうとしているケーキ屋から来たのかしら?」
「うん、……そうかもしれない」
あの女性は、やはり柑菜の心を乱す存在であるようだ。
変に思われないよう柑菜は必死に笑顔になろうとするも、どこか表情が固く、不自然なものになってしまう。