ケーキ屋の彼

ーーまさか、こんなことになるなんて……。


柑菜が選んだ道は、まさかの美鈴と秋斗が選んだ道だった。


なんとなく気まずい柑菜は、美鈴と秋斗の後ろを歩く。


「柑菜ちゃん、そんなに離れてないでこっちきなよ」


後ろでトボトボと歩くかんなに気づいた美鈴は、柑菜の手首を掴んで引き寄せた。


柑菜は転びそうになるも、なんとか堪える。


「ねえ、柑菜ちゃんは、大学院来る気はない? 教育じゃなくて、絵画専攻の」


「え? 私がですか?」


柑菜には予想もしていない話題だった。


まさか、このタイミングで大学院の話を聞くなんて想像もしていなかった。


そしてその時頭に浮かんだものは、涼が何かを美鈴に話したんだなということ。


「そんな、私にはそんな才能ないし……」


「才能って? それって自分で決めるものかな?」


いつもは明るくて接しやすい美鈴が、今は少し厳しさを持っているようだ。
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