夢を追え!!

仕方なく。ほんとに仕方なく握り返すと、普通の力の戻った。

「愛華、美人なのに変な噂たっても知らねぇよ?」

「あら、珍しいわねゆきが私を口説くなんて」

「口説いてねぇよ!ただの事実だっ!」

「っそ、まぁ誉めてくれてありがとう」

全然オレの言いたいこと伝わってない気がする…。

ため息をこぼしながら、ぶらぶらと歩く。その間にも、何人か同じ学校の奴に出くわした。

早く帰りてぇ…帰ってるけど。

駅に程近い商店街を進み、ただの飲み屋と夜の店がちらほら顔を見せ始めかけた狭間辺りにあるスポーツバーの前で止まる。

店の名前は『MooN』。まぁ、カッコつけて英語にしてるだけなんだけど。

当然のように中に入る愛華に続いて、足を踏み入れた。

「おかえ…あれ、愛華?雪兎は?」

「ここー。ただいまー」

「おかえり、ゆき」

愛華の後ろから顔を出すと、向かい合ってたお兄さんの他に、カウンター越しと厨房の方から声が聞こえてきた。
< 12 / 383 >

この作品をシェア

pagetop