ハライメ〜悪喰の大蛇〜
二、蛇の夢
私のハライノギは、去年行われた。
次の年に日菜子が本年をすることが決まっていたから、私の儀式は他のみんなと同じ、一日儀式の間に篭るだけのものだった。
赤い着物を着て、足首に鈴を付け、思い出した時に鈴の音を響かせる。
矢鳥家当主の父が神社へ続く階段に面した出口の番をして、入口の番をするウブモリは祖母と加代がつとめてくれた。
儀式はなんの問題もなく終わった。
……いや、問題はなかった、はずだった。
ハライノギが終わった直後から、私は奇妙な夢を見るようになった。
日菜子の夢だ。
『あざみちゃん、あざみちゃん』
日菜子が私を呼んでいる。
甘くねだるような声で、こっちに来て、あざみちゃん、と私を呼び続けている。
日菜子は首に白い帯を巻いていて、帯は風もないのに宙をひらひらと舞っている……。
いいや、よく目を凝らすと、それは帯なんかではなかった。
蛇だ。
白い蛇が日菜子の細い首に胴を巻き付け、頭と尻尾をくねくねとうごめかせているのだった。
蛇は真っ赤な目で私を見ると、笑うように口を大きく開いた。
首に巻きついた胴が締め付けを強くして、日菜子が苦しそうに呻くーーー
いつも、そこで目が覚めた。