ハライメ〜悪喰の大蛇〜
……本当に?
加代が心配しているのは、そこなんだろうか?
本当は、私の見た夢が正夢になりはしないかと恐れているんじゃないか?
ううん、
それを恐れているのは、加代じゃなくて。
私なんじゃないか……?
正夢なんて、あるわけないのに……
ああ、だけど、久しぶりにまたこの夢を見る……
日菜子が私を呼んでいる。
あざみちゃん、あざみちゃん、……
首に巻き付く白蛇が、くねくねと踊っている……
「あざみ」
日菜子でない声に名前を呼ばれ、私はハッと我に返った。
腕をつつかれてそちらを向くと、簡素な着物姿の加代が目線で前を向くように促した。
彼女と同じ着物を着た私があわてて前を向くと、離れの座敷の戸の前に立つ日菜子が、こちらに向かってお辞儀をしているところだった。
赤い着物を着た日菜子の足首で、結ばれた鈴がリン、と鳴る。
いよいよ今日から、ハライノギ本年が始まる。
日菜子は今からこの戸の奥の座敷ーーー儀式の間に入り、次に外に出るのは七日後だ。