ハライメ〜悪喰の大蛇〜

お社は当然として、離れは台所や風呂場もあって人が暮らせるようになっているけれど、ハライメはあくまで儀式の間の外には出られないからだ。

どっちにしろ、彼らの面倒を見るのは朝と夕の一日二回だけ。

それ以外はすることもなく、ただ座っているだけの、ハライメに負けず劣らず退屈なお役目だ。


「あざみ、どうしたの、すごくボーっとしてたけど。調子でも悪い?」

加代が小声で尋ねてくる。

しゃべってはいけない決まりはないのだが、儀式が始まったと思うと音を立ててはいけない気分になるようだ。

「ううん、大丈夫。今日、朝早かったから。寝足りなかったのかな」

私は笑って首を振った。

儀式の支度のために、今日は朝早くから忙しかったのだ。

……だけど本当は、寝不足の原因はそれだけじゃなかった。


「また、あの夢見たんじゃないの?」


隠そうとしたことを言い当てられて、私は言葉につまる。

やっぱりね、と加代がため息をついた。

「強引にでも一緒にウブモリをすることにしてよかったわ。じゃなきゃあんた、一人で七日七晩思い悩むことになってたもんね」

「うん……加代ちゃんがいてくれて、よかったよ」

私は観念してうなだれた。
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