ハライメ〜悪喰の大蛇〜
木でできた鳥居をくぐると、雑木林に囲まれて昼間でも薄暗い敷地の中に、ぽつりと小さな社が建っている。
これが明式神社。
神社には神主はなく、近隣に数軒しかない氏子の家の人々の手で管理されている。
小綺麗に保たれてはいるけれど湿っぽくうら寂しいその佇まいは、いかにも近所の人しか通ってこない土着信仰の場所という感じだった。
昔は里一帯が氏子だったらしいけれど、今ではここにこんな神社があることを知る人の方が少ないだろう。
雑木林と神社の敷地の境目を縁取るように、真っ赤な彼岸花が群れて咲いている。
私は彼岸花の道をなぞるようにして社の裏手に回った。
裏手は表よりもさらに日当たりが悪い。
けれどこの神社の彼岸花はよほど日陰が好きなのか、裏へ行くほど群れを大きくして咲き誇る。
その、ひときわ陰った一箇所に咲く、ひときわ赤く大きな花の群れの前に、少女がひとり、背中を丸めてしゃがみ込んでいた。
「ヒナ。こんな所にいたの」
私はようやく見つけた探し人の背中に呼びかける。
ヒナ―――日菜子は、肩までの黒髪を揺らして振り返った。
おっとりと優しい形の瞳がこちらを向く。
「あざみちゃん」
私の名前を呼んで、日菜子はほほえんだ。