ハライメ〜悪喰の大蛇〜
とりあえず、一番上にあった一番状態のいいノートを開いてみた。
どうやらページを最後まで使い切っていないようだ。
半分ほどが白紙のノートの、ボールペンで字が書かれている最後のページには、
その日の天気と「あざみの作った魚の煮つけが思いのほか上手だった」という話が祖母の字で記されていた。
よく見ると、書かれている日付は祖母が倒れる前の日のものだった。
一瞬、祖母との思い出が胸にあふれて涙が出そうになる。
……だけど、私は今日ここへ感傷に浸りに来たわけでも、祖母を偲びに来たわけでもなかった。
急いで涙をひっこめる。
このノートは最近のものすぎる。
日菜子の母について調べるなら、もっと古いものから探さなくては。
それぞれのノートの表紙には、使い始めた日と使い終わった日がマジックペンで書いてあり、私はその日付を頼りにノートの層をさかのぼっていく。
日菜子の母が矢鳥家に来たのは10歳くらいの時だったはずだから、今から20年と少し前くらいのノートがあれば……。
……このあたりから読んでみようか。
私は目星をつけた一冊を引っ張り出して、開いた。