ハライメ〜悪喰の大蛇〜

(何これ)

一枚のA4の紙を何枚かに破ったもののようだ。

書かれていたらしい文字は紙と共に引き裂かれ、パズルのピースみたいにばらばらになって畳の上に散らばってしまった。

あわててそのうちの一枚を拾い上げ――その紙片に書かれた文字を見て、私は小さく息をのんだ。


『狂っている』


よく見ると、他の紙片にも同じような不穏な文字が並んでいるようだ。

私はおそるおそる、散らばった紙片をもとのA4の形につなぎ合わせてみた。


ひどく乱れた文字の文章が、そこに現れた。


ほとんど書き殴っているに近い字で、ところどころ読めない部分や意味のつながらない箇所もあるけれど、これは―――



『こんなこと、ここまでの不貞が許されるものか、×××罪が×××ここまでの罪を犯さなければ蛇神は満足しないというのか×××
すべては蛇の××狂っている、狂っている、あの女××夫×××子供を×××あの娘××雅史の』



激情をそのまま紙に叩きつけたかのようなその文章。

見ているだけで気圧され、息が詰まる……。

これは……祖母が書いたものなんだろうか。

何だかゾッとして、私はいそいで紙片をまとめると元のように家計簿の間にはさみ、ページを閉じた。
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