ハライメ〜悪喰の大蛇〜
気を取り直して祖母の日記の続きを探そうと、また段ボールに手を突っ込む。
あった、これだ。
今度はさっきの日記の続きで間違いない。
『女の家の大家から連絡があった。
「夫婦」は夜逃げの際に娘だけを置いて行ったそうで、今その娘は大家の家で預かっているが、その「夫婦の娘」の面倒をこちらで見られないかという。
まさか子供まで産ませていたのかと呆れたが、よくよく聞くと、「産ませた」どころの話ではなかった。
娘の歳は、今年で10歳になるという……。10歳になる定史の娘!雅史にとっては腹違いの妹になる娘……そんなものがいたなんて。
あの男はどれだけ昔から私を裏切っていたというのか……』
腹違いの妹……これだ。
これが日菜子のお母さんのことだ。
ノートをよく見ると、一番最初の何ページかを破ったあとがあった。
もしかして……たぶん、この破られたページが、家計簿にはさまっていたあの紙片なんだろう。
あれは、夫が10年以上も前から自分を裏切っていたと知った怒りと悔しさをぶつけて書かれた文章だったんだろう。
そのあと破り捨てようとして、何かがあって結局いったん家計簿にはさみ、そのまま忘れてしまった、というところだろうか。
何だか祖母の女としての生々しさを盗み見ることになってしまい、今更ながらに罪の意識を感じながら、私はそれでも先を読み進めた。