ハライメ〜悪喰の大蛇〜
『娘を矢鳥家に引き取ることにした。
両親に捨てられ、他に頼る親類もないあわれな娘だ。
だが、けして同情で引き取ろうというわけではない。
私を裏切り続けた夫と、夫を奪った女との間に出来た忌まわしい娘…本当なら視界に入れることもしたくない。
だが私の心情とは別に、矢鳥家にとってはこの娘の存在は好機であった。
私の子供は長男の雅史だけだ。
このままでは、次のハライノギ本年でハライメをつとめられるものがいない。
この娘を矢鳥家の子とすれば、滞りなく本年の儀式を行うことが出来る。
娘の名前は、佳菜子という』
佳菜子。
日菜子のお母さんの名前。
彼女はこうして、矢鳥家の子供になったんだ。
それにしても、「視界に入れたくもないが、ハライノギ本年を行うために引き取った」だなんて……
まるで人を道具として利用してるような言い草だ。
さすがにひどい。
両親は不倫のあげく子供を置いて夜逃げするようなどうしようもない人たちだけど、子供には何の罪もないのに。
そうして佳菜子を引き取ったあとも、あくまで愛情は雅史だけに注ぎ、佳菜子をぞんざいに扱うような日記が続き、
私はだんだん気分が悪くなってくる。