ハライメ〜悪喰の大蛇〜
祖母と血のつながらない娘の間柄がうまくいっていなかったこと自体は想像の範囲内だけど、まさかここまで祖母が冷淡だったとは思わなかった。
ただ、異母兄妹になる父と佳菜子は仲が良かったようだ。
『佳菜子は雅史になついているようだ。雅史も妹ができたことを喜んでいる。
まだ高校生だというのに当主として矢鳥家を背負って立つことになってしまったあの子に、この上佳菜子の存在が重荷にならなければいいが』
祖母はそんな風に書いているけど、私は父が佳菜子の味方だったことにほっとした。
さらに時間は進み、父は就職し、「すみえ」という奥さんをもらう。
(私のお母さんだ)
佳菜子には厳しい祖母だが、母のことは気に入っていたようだ。
「気が利く良い嫁だ」と書かれているのを見つけて、私はちょっと嬉しくなった。
その次の年、「初孫のあざみ」が生まれた、とある。……私のことだ。
同じ年に、祖母が計画したとおりに佳菜子をハライメとしてハライノギ本年が行われたようだ。
ここでも祖母は、佳菜子のことよりも当主として明式神社に篭る父のことばかりを心配しているようだった。
その後は、しばらく何事もなく日々が続いて……
『佳菜子が身ごもった』
その文章は、何の前触れもなく現れた。