ハライメ〜悪喰の大蛇〜
『蛇神は、ハライノギの罪祓いだけでは食い足りず、さらに罪をよこせと迫っているのか。
まだ学生の身でこんなことになるなど、普通ならば許しがたいが、この罪深い出来事でアケジキ様の腹が満たされるというなら受け入れるほかにない。
だが、矢鳥家は「16,7の高校生の娘が父無し子を産んだ」という目を世間から向けられることになる。
再び矢鳥家の名に傷が付く……それが心苦しい』
私はハッとして、日記の日付をさかのぼった。
佳菜子の相手の男性について触れている場所を見落としていないかと思ったのだ。
けれど、それらしい箇所はどこにも見つからない。
そもそも佳菜子について書かれている部分は少なく、それは日付を先に進んでも同じだった。
相手について何も言及されないまま、日記は『佳菜子が娘を産んだ』までたどり着いてしまう。
そのあともずっとノートは続くが、佳菜子の娘……日菜子の誕生を境に、祖母の日記の中に佳菜子の名前はまったく登場しなくなってしまった。
(これじゃ……佳菜子がどうなったのかわからない。
おばあちゃんたちに教えられた通り、ヒナを産んですぐに亡くなったのか……それとも、加代ちゃんが見たように……)
その後の何年かは、この家で私たちと共に暮らしていたのか。