ハライメ〜悪喰の大蛇〜
「お食事をお持ちしました」
縁側に上がり、戸に向かって声をかける。
少しの間の後、するすると静かに戸が開いた。
私は中をのぞいて、「おはよう、ヒナ」と笑いかけた。
「ゆうべはちゃんと眠れた?けっこう遅くまで鈴の音がしてたみたいだけど……」
「……」
日菜子は返事をしなかった。
無言のまま食事の乗ったお盆を受け取ると、すぐにぴたりと戸を閉めてしまった。
「ヒナ?」
あれ?どうしたんだろう。
辛いにしろ平気にしろ、日菜子のことだから笑顔を返してくると思ったのに……。
でも考えてみれば、一応これは神事で、彼女は今自分自身のために真剣に神事に取り組んでくる最中なのだ。
のんき顔でな話しかてしまった私の方が不謹慎だった。
ごめんね、と私は閉じられた戸に向かって小声で謝った。
少しすると加代がやってきて、私たちは今日も「儀式の間」の入口の戸の前に並んで正座した。
「それで、どうだったのよ、あざみ」
「うん。おばあちゃんの日記読んだよ」
私が言うと、加代は「うわあ、ホントにやったんだ」とちょっとのけぞった。