ハライメ〜悪喰の大蛇〜

これを読んで母のことを知りたいという気持ちと、母に興味なんかないという態度を貫くことでプライドを保ちたい気持ちとがケンカをして、
ここまで来ておきながらなかなか読み始めることができなかった。

(だけど、せっかく持ってきたんだし……。
それに、お母さんにもこの家で佳菜子さんと一緒に暮らしてた時期があるはずだよね。
だったら、この日記の中に佳菜子さんの手掛かりがあったっておかしくないはずでしょ……)

私はそんな理由を付けてようやく自分を納得させると、様々な期待と不安を抱きながら日記の青い表紙をめくった。




母の日記は、母が矢鳥家にとついできたその日から始まっていた。

一日目の日記はちょっと気合が入っていて、「高木すみえのこれまでのこと」と題して書かれている内容によると、
彼女はここからずっと北の方の県の都市部で生まれ育ち、就職のためにこちらに越してきて、友人からの紹介で夫となる「雅史さん」と知り合った。

矢鳥家がいまどき土着信仰を律儀に守り続ける「ちょっと変わった家」だということは雅史さんから聞いていたが、
父と一緒になれるならそれもまた良しと考え、矢鳥家の長男の嫁になることを決めたそうだ。

「矢鳥すみえのこれからのこと」と題された下には、雅史さんを精一杯愛して支えていきたいという決意がわりと長々とつづられている。


……娘の立場でこういうものを読むのは結構いたたまれない。
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