ハライメ〜悪喰の大蛇〜
蛇神信仰について、父は「信じる信じないの問題ではなくこれが我が家の役割であり、その役目を果たすことが大事だ」という考えで(確か日菜子もそんなことを言っていたっけ)、
母に信仰の強要はしなかった。
だから母もあくまで「役割」として明式神社にまつわるものと関わることにしたようだ。
そんな母からすると、祖母の信心深さは少し度が過ぎるように感じられることも多かったらしい。
だけどそれを非難するわけではなく、「それがお義母さんの生き方なんだ」と納得して尊重しようとしている様子だった。
氏子の暮らしになじめずに出て行ったと聞いたけど、想像していたよりは順応力のある人だったみたいだ。
献身的に夫を支える母は、姑とも良好な関係をきづけていたらしい。
母の嫁入り当時、中学生だった義妹の佳菜子とも、仲が良かったようだ。
『お義母さんはあまりにも佳菜子ちゃんに冷たいように思う。
いくらお義父さんの隠し子だといったって、自分のもとに引き取って育てるからには愛情を持って接するのが責任だと思うのだけど……。
でも、嫁の私が口出ししていいものなのかどうか。
佳菜子ちゃんはとてもいい子だ。
父親代わりの雅史さんによくなついていて、私のことも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と慕ってくれる。
一人っ子の私にとって、佳菜子ちゃんは初めてできたかわいい妹だ。