ハライメ〜悪喰の大蛇〜
佳菜子のハライノギが終わってすぐの頃に「あざみが風邪をひいたみたい」とあり、そこからしばらく日記は「あざみの心配」一色になる。
その後具合がよくなってからも、数か月間は娘と夫のことしか書かれていない。
結婚二年目で娘が娘が生まれたばかりの母の浮かれた文章を読むのが照れを通り越して少々辛くなってきたころ、久しぶりにノートに私と父以外についての文章があらわれた。
佳菜子についてだった。
『雅史さんから、佳菜子ちゃんが妊娠しているらしいと教えられた。
「相手は?」と聞くと、「答えようとしない」とのこと。
そういえば佳菜子ちゃん、最近やけにぼんやりと、上の空な様子でいることが多かった。
だけど年頃の女の子だから悩みくらいあるだろうと思ったし、何より私はあざみのことで手いっぱいだったから、
様子が変わったことに気づいていながら彼女のことをまるっきり気にかけないで来てしまった。
年頃の女の子だからこそ、兄や義母には話せなくても私になら話してくれることもあったかもしれないのに……。
今からでも遅くない。明日、佳菜子ちゃんと話をしてみよう』
私は我に返った。
いつの間にか母を知ることに夢中になって、自分が何を調べているのか忘れかけていたけど……
佳菜子の妊娠と、その相手。
重要な部分だ。
私は気を引き締めて次の日のページをめくった。