ハライメ〜悪喰の大蛇〜
五、翳り
ハライノギ本年が始まって今日で三日目だ。
日菜子は相変わらず黙々とハライメをつとめている。
父の方は三日目にしてすでに疲れてきたようで、夕食を届けたときに「先は長いなあ」と目をしょぼつかせていた。
ウブモリの一日のつとめを終えた後、今夜も私は自分の部屋で母の日記を開いた。
昼間加代にこの日記帳のことを話したら、「すごい、佳菜子さんの日記よりも掘り出し物なんじゃないの?」と評された。
確かに、私にとってはそうかもしれない。
けど、日菜子のためにどれだけ役に立つかはわからないところだ。
ただ、昨日最後に読んだページに、子供が生まれた後佳菜子と母と父の三人で名前を付けた、とあった。
少なくとも佳菜子は、日菜子を産むと同時に亡くなってしまったわけじゃないらしい。
それから佳菜子はどうなったんだろう。
私は昨日の続きのページから文字を追い始めた。
ノートの中で時間が流れていく。
相川あらず「あざみ」のことを中心に、日々のこと、家族のこと。
産まれたばかりの日菜子と、若くして母親になった佳菜子のこと。