ハライメ〜悪喰の大蛇〜

今、雅史さんは佳菜子ちゃんの部屋に行っている。
叩いてしまったことを謝って、きちんと話をしてくると言っていた。
……こんなこと書いちゃいけないと思って書かずにきたけれど、もうごまかせない。
最近の佳菜子ちゃんは普通じゃない。
これは、「育児に嫌気がさして男遊びをしている」状態とは違うと思う。
あまりに無邪気に欲望に……性欲に従っている、そんな感じ。
無邪気すぎて、自分がなぜ周囲から叱られるのかもわかっていないみたい。
前はこうじゃなかった。
若くして子供を授かりはしたけど、男性ならだれが相手でもいいと考えるような子じゃなかった……なかったはずだ。
一体、彼女の心の中で何が起こっているんだろう。
生い立ちからして複雑な子だから、長年積み重なってきたものがここに来て限界を迎えてしまったのかもしれない。
一度心のお医者さんに連れて行った方がいい。
雅史さんと相談してみよう』



『お祭りでのことが噂になっている。
高校生の子が父親のない子を産んだ時点でいろいろ言われてはいた。
それは仕方のないことだと思っていたけど……。
特にひどいのは、氏子の人たちの言い様だ。
あの人たちはもともと「めかけの子」として矢鳥家にいる佳菜子ちゃんにいい感情を持っていなかったから、妊娠、男遊び、あげくに今回のことと来て、勝ち誇ったように彼女を蔑む言葉を吐く人までいる。
大の大人が10代の女の子に対してみんなで「あの娘は蛇憑きだ、そうに違いない」だなんて、バカバカしいにもほどがある。
せめて、佳菜子ちゃんの耳に直接こんな話が入ることがありませんように』
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