ハライメ〜悪喰の大蛇〜
(アケジキ様の腹を満たせなかったから……?)
アケジキ様―――明式神社に祀られる蛇神は、「罪」を好んで食らう悪喰の大蛇だ。
ハライノギはハライメの身体から落とした「罪や穢れ」を蛇神に捧げる儀式。
そうすることでハライメをつとめる娘の厄払いとし、同時に蛇神を鎮める行事……一応、そういうことになっている。
つまり、佳菜子は本年のハライメとして蛇神のおなかをいっぱいにすることが出来ず、食べたりない蛇神は佳菜子に憑りついて、食料になる「罪」を犯させている……ってこと?
それが「蛇憑き」の意味?
だからおかしな行動を取るっていいたいの?
……日菜子を身ごもったのも、そのせいだって?
(そんなのひどい。佳菜子さんのことが気に入らないから、悪く言いたいだけなんじゃないの)
だけど、母以外のすべての人の意見が「佳菜子は蛇憑きだ」ということで一致した、とある。
祖母だけじゃなく、父までが一緒になってそう言ったと……。
心を病んだ佳菜子がどうなるのか心配しながら、私はさらに文章を追った。