それは星の最果てのようで。
「さ…ーさ…なーぎーさー!」

はっと起きたとき、服は汗でビッショリだった。
初夏に入ったばかりだというのにこの暑さだ。東京よりも全然暑い。
蝉の声や蛙の声がコラボして一層暑さを感じられる。
「ごめんね。車のクーラー壊れてて冷房つかなかったの。しまおばあちゃんの家にお風呂あるから貸してもらおうね」
「…ん」
田舎のばあちゃんちにきたのは久々だ。
盆休みのときに来てたりはしたけど泊まりは初めてかもしれない。
「ああ、奈純(なずな)となぎちゃんじゃろ。よう来たなあ」
正面玄関からばあちゃんが出てきた。
広く大きい家に1人。車椅子に乗っていた。
ばあちゃんちは平屋だから車椅子でも苦はないだろう。
庭が広いのと池が大きいのと塀が長いのが昔金持ちだった象徴か。。
「おばあちゃんっ。勝手に車椅子で出てきちゃダメだって水純(みずな)に言われたでしょ!もう…っ」
母さんはばあちゃんの傍へ駆け寄って車椅子を押しながら中へ入っていった。
「あ、なぎー!お風呂は入って右の奥にあるからー!」
外まで聞こえるくらいの大きい声が聞こえた。
近所に家が少ないからってこの大きさは都会なら迷惑だぞ…


とりあえずシャワーを浴びて着替えた。
汚いというか狭い風呂だった。明かりも付いていないような暗さ。
これからあんなオンボロな風呂を使わされるのかと思うと鳥肌がたつ。

母さんは引っ越しの片付けをしていた。
2人暮らしだったから荷物はそうそう多くない。母さんは1人で出来るからこの辺り見てきてもいいよと言った。

「この辺りっつったってなんもねえだろ…」
台風がきたら吹っ飛んでしまいそうな家があって川と森があるだけ。
(電波環境悪そうだな)
見たところあまり電柱も立っていないように見える。
「あ、ぎり1本…」
向こうに電柱を見つけた。
「あ、え…」
驚いた。というか目を疑った。

その電柱の頂点に髪の長い女の子が立っていたから。
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