嘘つきなキミ(続編)
ーはやとー

ゆうきが亡くなった。
でも、俺は医者として、主治医として最後までやらないといけない。

小さく深呼吸をし、おじさんたちの顔をしっかり見た。

「23時42分。ご臨終です。」

俺は頭を深々と下げた。


おじさん・おばさん「ありがとうございました。」


おじさんたちも、頭を下げた。


そして、俺は頭を上げ、ゆうきの手を握り締めているこあに近付きながら話しかけた。

「こあ。今日はもうあいと一緒に家に帰りなさい。」

こあ「いや...。ゆうきのそばにいたい。」

「はあ...ダメだ。気持ちはわかるけど今日はもう、遅いから家に帰って休め。」

こあ「お父さんになんて...こあの気持ちわかるわけない!!!!」

そう言ってこあは部屋を飛び出して行ってしまった。

「こあっ!!!!」

俺は急いで振り返ると、少し良くなっていた視界が一気に歪んだ。
体がフラつきゆうきのベットへ手をついて俯いていた。


あい「はやとっ!!!」

俺を心配するあいが近付いて来た。
俺は顔を歪めたまま怒鳴ってしまった。

はやと「来るなっ!!!」

あいの足音が消えた。

「わりぃ...。こあを頼む」

あい「...わかった。」


あいは静かに病室を出ていった。


おじさん「はやとくん。どうしたの?」

「ごめん...。なんでもないんだ。」

おじさん「なんでもない事ないだろ。さっきも車椅子で、入って来たし。」


俺は何も言えず俯いてしまった。


おばさん「はやとくん...言いたくないなら言わなくていい。でもね、これだけは覚えておいて。あいちゃんもゆうきくんも私達の本当の子供だと思ってるわ。もちろん、こあちゃんのこともね?だからね、はやとくん。あなたは一人じゃないのよ。一人でなんでも溜めすぎよ。」


「...おばさん...ありがとう。」


俺は涙を堪える事が出来なかった。


おじさん「はやとくん。」


そう言って俺の肩に軽く手を置いた。


「俺...病気なんだ...」

おじさん「え?」

「再生不良性貧血。聞いた事ないでしょ。」

おじさん「ぁあ。」

「この病気はなんらかの原因で自分の血液細胞を攻撃しちゃうんだ。」

おじさん「でも、よくなるんだろ?」


俺は首を横に振った。


「例え移植しても無理なんだ。結局は輸血したりいろんな治療をしなくちゃいけない。完治は望めない。」


おじさん達は何も言わず、いや、何も言えず黙って俺を見ていた。


「予後も良好とはとても言えない。」

おばさん「こあちゃんには?」

「はっきりとは...。でも、あいつ気付いてるんだよな...。」

おじさん「そうか。話さないのか?」

「...いつかは、ちゃんと話さないといけないと思ってる。でも、今は...。」

おじさん「そうか。話してくれてありがとう。」


俺は頭を下げ、ゆうきの部屋を後にした。



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